Creator No.1

内藤晶
デザイナー(書のクリエイター)
デザイン業、商業用筆文字制作、インスタレーションの企画制作のほか、絵画のような書や猫型漢字など独自の書を使ったデザイン·アートを制作。書の技法を用いながら新しい表現の書を開発してアート現場で発表しています。

Interview
Q.内藤さんの今回の作品は「フォト書」という、心象スケッチをCGと書で表現したオリジナルの創作方法ですが、どのようにしてこのようなスタイルにたどり着いたのでしょうか。
A.もともとは広告デザイナーとして勤務していましたが、グループ展に出展する際に、他の参加者と差別化できる面白いものは何か?と考えました。その当時、自分の即戦力はデザイン力、画像の加工技術、幼少期から習っていた書道。自分が撮影した風景写真を加工技術とデザインで創作し、筆文字と合わせる「フォト書」が完成しました。
Q.制作工程で一番難しい部分、ポイントはどこですか?
A.アイデアを出すところですね。最初にイメージしたものが良くなければ、形にしても良いものはできないので。必要に応じて素材を自作するので、描けないと思っていた絵も描けるようになったり、技術力を新たに獲得するのも至難です。
2018年、内藤さんが個展にて展示した
屏風「花鳥風月」
Q.今回の作品を制作するにあたりこだわった部分はありますか?
A.華やかなお祝いの気持ちを前面に出しつつ、年の初めを明るくスッキリとした気持ちで迎えられるようなデザインを心掛けました。筆文字は手書きですがCGで美しく「装う」ことで改まった日の祝いの言葉になります。自分の言葉が紙の上に乗って誰かに伝わる、見てもらう、ということを強く感じて制作しました。
Making
制作風景
毎年、大変好評をいただいている内藤さんの年賀状デザイン。
イメージした書を揮毫し自ら写真も撮影、デジタル加工し仕上げていく内藤さんならではの制作工程を覗かせていただきました。
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アイデアをノートなどに書き出します。
この時点で完成形を頭の中でイメージします。

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アイデアスケッチを参考に筆文字を書きます。
後でスキャンしてデジタルデータ化します。

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デジタル化した筆文字、撮影後加工した白梅、デジタル作画した和柄などをイラスト制作ソフトを使ってパソコンでレイアウトします。

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レイアウトが完成したら、今度は画像処理ソフトを使用して質感や筆文字に色や模様を加工して出来上がりです。
イメージしたものに近づけていきます。

今回、内藤さんには
バリエーション豊かな4デザインを制作していただきました!
Creator No.2

東郷美栄子
水引アーティスト
石川県金沢市在住。伝統工芸の水引に出会い、2013年より作家活動をスタート。オリジナルの作品制作のほか、個展やワークショップを開催。鮮やかな色を巧みに配する、新しい感性の作品が支持されている。著書に『水引細工のアクセサリー』等がある。

Interview
Q.水引アーティストとして活動されるようになったきっかけは?
A.街で目にした水引アクセサリーを自分でも作ってみたいと思ったことです。その後、水引にはたくさんの色があること知り、好みの色合わせで水引細工を作り始めました。
Q.今回の作品のポイントはどこですか?
A.水引を結わえたお正月飾りをメインに、梅と、干支の牛モチーフをあしらいました。お飾りはキリっと和風に、牛は淡い色で優しい感じに仕上げました。普段動物は作らないので、水引でどう表現するかが難しかったです。
Q.年賀状に関して、心に残るエピソードがありましたら教えてください。
A.子どものころから書くことが好きだったので、年賀状には結構力を入れていました。プリントゴッコを使ったり、絵の具で全面塗った上に文字を書いたり、時間をかけた年賀状を友人に褒めてもらえるととても嬉しかったです。
今も、一年に一度とはいえ、一言書き加えた年賀状を送っています。疎遠になっている方とも、ちょっとした文通をしているみたいで、とてもわくわくします。
Making
制作風景
普段は水引細工を用いたデザインやご祝儀袋の他、アクセサリーも制作されているという東郷さん。歴史ある水引細工でありながら、新鮮で心ときめく作品が生み出される工程を拝見させていただきました。
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必要な道具を準備したら、制作スタート。
最初に、水引のお飾りを作ります。
今回は、白をベースに、赤と深緑を加えました。

2

2束の水引をぐるぐるねじり、結わえます。
色の出方を見ながら丸く形をととのえ、
交差する場所に水引を巻きつけて固定します。

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お飾りにつける、牛のモチーフをつくります。そして、梅のモチーフをつくります。赤一色にしました。いくつかの結びを組み合わせ、パーツを接着します。
梅の花。

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お飾りにモチーフを組み合わせて完成です。

水引で、かわいらしい表情の
牛の作品を2作品
制作していただきました!

Creator No.3

ウルシマトモコ
エイブルアートカンパニーのカンパニーアーティスト
エイブルアート・カンパニー登録アーティスト。作家としての活動を励みに、普段は焼き菓子を作る事業所に通う。また、エイブルアート芸術大学にも所属している。私にとってアートは生きる糧であり、対話のきっかけ。そして暮らしの側にあるアートを目指している。

Interview
Q.創作活動をされるようになったきっかけは?
A.子供の頃から自分の想いが形になる事は、素敵な事だと思っていて、表現したい!という望みがありました。エイブルアート芸大に通い色鉛筆や絵具に再び触れ、子供の頃から木彫りや粘土など様々な技法を試す中で、切り絵が好きだと思えました。そうして自分のスタイルを見つける事ができ、エイブルアート・カンパニーに応募し、登録できました。
Q.創作活動をされることで、生活の変化などはありましたか?
A.創作活動から広がる社会との接点が得られました。例えばJAGDAさん主催の「つながりの展覧会」のメインビジュアルに私の作品が選ばれた時は、六本木のビルの間から、私の作品が大きなポスターになって張り出されているのを見て、嬉しいというか…社会との繋がりを感じました。障害を抱えていると社会からの疎外感を感じることもあるのですが、創作活動が仕事に繋がっていくことで社会との接点を感じることはたくさんあります。
ウルシマさんの作品がメインビジュアルとなった
「つながりの展覧会」ポスター
Q.制作工程で一番好きな作業はどこですか?
A.下書きをせずに、イメージした線を切っていく作業が一番楽しいです。
いい 形が現れた時、いい色の組み合わせに出会えた時も励みになります。そうしてできた作品を 気に入ってくださる方がいたら幸せです。
Making
制作風景
自分が発見したことや想いが、作品を通じて共感を得られることが幸せというウルシマトモコさん。今回は優しい瞳の牛をイメージし、作品を制作されたそうです。
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【イメージする】
参考になる画像や画集を見たり、ラフスケッチを描き完成形をイメージします。

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【切る】
ラフスケッチをもとに、線をイメージして紙を切り出していきます。

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【配置を考える】
ベストな配置を構想し、切り出した紙を並べて置いていきます。

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【貼る】
ノリをつけて貼り、完成です!

ウルシマさんならではの色使いと優しい牛の表情が印象的な年賀状はこちらです!
Creator No.4

風来
Art craft designer(アートクラフト デザイナー)
スタイリストとして活動するかたわら、お細工物を作っていたが、2016年より本格的につまみ細工教室を始める。
現在、4教室を受持ち、江戸の雑学を交えながら教えています。

Interview
Q.「つまみ細工」に携わるようになったきっかけは?
A.江戸時代の女の子たちの手芸に興味を持ち、どんな物を作っているのか調べているうちに江戸・明治期のちりめん細工の本に出会いました。そのなかにつまみ細工で作った巾着や箱があったのです。つまみ細工はかんざしだけでなく、こんな楽しみ方があるのかと興味を持ちました。
Q.作品を制作していて楽しい点、醍醐味は何ですか?
A.どんな作品を作るか、どうやって作るかを考えている時が一番大変で時間がかかり、そして一番楽しい時間です。煮詰まったり、気分転換をしたい時には何も考えず散歩をしたり…歩いているうちにアイデアがふと浮かんだり、考えがまとまったりします。
風来さんが制作された
かんざしと髪飾り
Q.年賀状デザインということで、普段と違って難しかった点、注意した点などありますか?
A.新年を迎えるのに相応しい晴々とした作品になるよう意識しながら、干支の文字を花で隠しすぎないように気を付けました。また一人でも多くの方につまみ細工を知ってもらいたいという気持ちもあり、今回は古典的な形のつまみ細工にしました。
Making
制作風景
今回初めて年賀状の制作をお願いした風来さん。江戸時代から続く伝統的な工芸「つまみ細工」の制作過程にとても興味があり、制作の様子を取材させていただきました!
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【土台になる文字を作る】
バルサ材をパーツごとに切り抜きアクリル絵の具を塗る。乾いたら透明ニスを塗ります。
道具

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【つまみ細工で花、葉を作る】
羽二重を小さな四角形に切り分け、切り分けた小片をピンセットで折り糊を付け花弁や葉を作る。花は花弁を合わせ花芯を付け、葉はパーツを合わせ葉の形に整える。

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【ワイヤーで枝を作る】
枝はワイヤーにフラワーテープを巻き、太い枝と細い枝を作る。つぼみはス玉のペップをアクリル絵の具で塗る。細い枝と太い枝をフラワーテープで纏め、所々、つぼみのペップを入れながら巻く。
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【組み立て】
土台の文字にバランスよく花や枝を配置し、グルーガンで止める。色紙と薄い紙を合わせた背景に置き、撮影をしたら完成です!
梅の花。

今回、風来さんには
「丑」と「絆」の2作品を制作していただきました!
