【文例集】病気・療養中の方への年賀状は失礼?思いやりが伝わるマナーと書き方を徹底解説

年の瀬が迫り、お世話になった方々の顔を思い浮かべる季節です。しかし、相手が病気やケガで療養中だと知ったとき「年賀状を送ってもいいのだろうか」「お祝いの言葉が、かえって相手の負担になってしまわないだろうか」とペンが止まってしまった経験はありませんか。
特に、相手が長期の入院をしていたり、手術を終えたばかりだったりすると、その迷いは一層深くなることでしょう。相手を大切に思うからこそ、どうすれば失礼なく、温かい気持ちを伝えられるのか迷ってしまうでしょう。
この記事では療養中の方へ年始の挨拶状を送る際に守るべき伝統的なマナーやすぐに使える具体的な文例を、相手との関係性に合わせて詳しくご紹介します。最後まで読めば、あなたの心遣いが真っすぐに伝わる、最適な挨拶の方法がきっと見つかります。
1. 病気の方への年始挨拶:基本の考え方と選択肢
療養中の方へ年始のご挨拶をする際は、いつも以上に細やかな配慮が求められます。大切なのは、お祝いの気持ちよりも、相手の心と体を思いやる気持ちです。
ここでは、挨拶状を送る前に心に留めておきたい基本的な考え方と、年賀状以外の選択肢について見ていきましょう。
1-1. 療養中の方へ年賀状は送ってもいいのか
結論からいうと、療養中の方へ年賀状を送ること自体が、一概にマナー違反というわけではありません。しかし、新年を祝う「年賀状」は、華やかなデザインやおめでたい言葉が多いため、相手の病状や気持ちによっては、負担に感じさせてしまう可能性があります。
例えば、おめでたい雰囲気についていけないと感じたり、返事を書かなければと気を遣わせてしまったり、あるいは、体調によってはポストまで手紙を取りに行くことさえつらい場合もあります。
もっとも大切なのは、相手の状況を最優先に考えることです。「おめでたい気分ではないかもしれない」「返信を書くのがつらいかもしれない」といった相手の気持ちを想像し、挨拶状を送るかどうか、送るならどのような形が最適かを判断しましょう。
もし可能であれば、ご家族や共通の知人などを通じて、挨拶状を送っても差しつかえないか、そっと様子を伺ってみるのも一つの方法です。
1-2. 「年賀状」以外の挨拶状という選択肢
療養中の方へは、新年を祝う言葉を使わない「年始状」や、時期をずらして送る「寒中見舞い」が、思いやりの伝わる選択肢となります。
- 年始状:年賀状と同じ時期(松の内)に送りますが、「おめでとう」などの賀詞を使わず、相手の健康を気遣う言葉を中心につづる挨拶状です。
- 寒中見舞い:年賀状の時期が過ぎてから(松の内明け~立春まで)送る季節の挨拶状です。少し時期をずらすことで、相手に落ち着いた気持ちで読んでもらえるという利点があります。
これらの挨拶状を選ぶという行為そのものが、「あなたの状況をきちんと理解し、配慮していますよ」というメッセージになります。形式を変えるだけで、相手を気遣う気持ちがより深く伝わるのです。
1-3. 相手にプレッシャーを与えないための配慮
挨拶状を送る際には、内容にも細心の注意を払いましょう。相手に余計な気遣いをさせないための、大切なポイントが2つあります。
第一に、病状やケガの具合を詳しく尋ねるような内容は避けることです。相手にとっては答えにくい質問かもしれません。
また、「頑張って」「早く元気になって」といった励ましの言葉も、すでに十分頑張っている相手にとってはプレッシャーに感じさせてしまうことがあります。相手のプライバシーに踏み込みすぎず、静かに回復を願う姿勢が大切です。
第二に、返信を催促するような印象を与えないことです。「お返事ください」といった直接的な言葉はもちろん、「また連絡します」といった表現も、相手によってはプレッシャーに感じることがあります。「返信はご不要です」と一言添えるなど、相手の負担を軽くする心遣いを忘れないようにしましょう。
2. 失礼を避けるための必須マナー
療養中の方へ挨拶状を送る際は、いくつかのマナーを守ることで、より一層あなたの思いやりが伝わります。言葉選びからデザインまで、相手の心に寄り添うための具体的なポイントを確認していきましょう。
2-1. お祝いの言葉(賀詞)は使わない
年始の挨拶状でもっとも注意したいのが、「賀詞(がし)」を使わないことです。賀詞とは新年を祝う言葉全般を指し、療養中の相手の気持ちを考えると、お祝いの言葉はふさわしくありません。具体的には、以下のような言葉はすべて避けましょう。
- 漢字四文字の賀詞:「謹賀新年」「恭賀新年」など
- 漢字二文字の賀詞:「賀正」「迎春」「頌春」など
- 文章の賀詞:「あけましておめでとうございます」「新年おめでとうございます」
- 英語の賀詞:「Happy New Year」
代わりに、「年始のご挨拶を申し上げます」や「寒い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか」といった、穏やかな挨拶から書き始めるとよいでしょう。
2-2. 避けるべき忌み言葉の具体例
お祝い事の手紙全般で使わないほうがよいとされている「忌み言葉」は、療養中の方への挨拶状では特に注意が必要です。不吉なことや物事の終わりを連想させる言葉は、無意識のうちに使ってしまわないよう、書いた後に必ず確認しましょう。
- 終わる、失う、切れる、絶える、離れる、衰える、倒れる、枯れる、破れる など
- 「去年」の「去」も「去る」を連想させるため避け、「昨年」や「旧年中」を使いましょう。
これらの言葉を避け、「皆様の健やかな一年をお祈り申し上げます」「ますますのご活躍を」といった、前向きで明るい表現を選ぶよう心がけましょう。
2-3. はがきのデザイン選びのポイント
はがきのデザインも、相手を気遣う大切な要素です。お正月らしい日の出や干支のイラスト、金銀を使ったきらびやかなデザインは避け、落ち着いた印象のものを選びましょう。
冬から早春にかけての、穏やかで生命力を感じさせる植物の絵柄がおすすめです。例えば、梅や福寿草は、寒い冬を乗り越えて春の訪れを告げる花であり、静かながらも力強い生命力を感じさせます。
こうしたデザインは、相手の回復を願う気持ちと自然に重なり、心に安らぎを届けてくれるはずです。色合いも、赤や金といったお祝いの色は避け、水色や緑、ベージュといった穏やかで優しい印象の色でまとめられたデザインを選ぶと、より心遣いが伝わります。
- おすすめのデザイン例:梅、福寿草、水仙、雪の結晶、椿 など
2-4. 温かみが伝わる手書きメッセージの重要性
たとえ挨拶状の大部分を印刷で済ませる場合でも、最後に必ず手書きで一言を添えることをおすすめします。パソコンの活字だけでは伝わらない、あなた自身の温かみが、手書きの文字には宿るからです。
「自分のために時間をかけてくれた」という事実そのものが、相手にとってはうれしいメッセージとなります。字の上手・下手は関係ありません。心を込めて丁寧に書かれた文字であることが何よりも大切です。相手の顔を思い浮かべながら、あなた自身の言葉をつづってみましょう。
一言の文例
- 「どうかご無理なさらないでくださいね」
- 「〇〇さんの笑顔がまた見られる日を楽しみにしています」
- 「春になったら、また一緒にお茶でもしましょう」
- 「焦らず、ゆっくりとご自身のペースを大切にしてください」
3. 【相手別】すぐに使える年始の挨拶 文例集

ここでは、療養中の方へ送る年始の挨拶状の文例を、相手との関係性に合わせてご紹介します。これらの文例を参考に、あなたらしい言葉を加えて、気持ちの伝わる挨拶状を作成してみましょう。
3-1. 友人・知人へ送る場合
親しい間柄であっても、相手の状況を思いやり、丁寧な言葉遣いを心がけることが大切です。相手に返信の負担をかけないよう、「お返事は不要です」といった一言を添えると、より親切な印象になります。
<文例>
年始のご挨拶を申し上げます
ご無事に越年のこととお慶び申し上げます
その後お体の具合はいかがですか
ご無理なさらずに ゆっくりとご静養ください
〇〇さんのペースで また元気な顔を見せてくれる日を心待ちにしています
寒い日が続きますので どうぞ暖かくしてお過ごしください
なお ご返信には及びません
3-2. 上司・恩師など目上の方へ送る場合
目上の方へは、敬意を払ったフォーマルな言葉遣いが基本です。相手の健康を気遣いつつも、踏み込みすぎないよう配慮し、穏やかな新年の訪れを願う言葉で締めくくりましょう。
<文例>
年始のご挨拶を申し上げます
先生におかれましては お変わりなくお過ごしのことと存じます
その後 お加減はいかがでいらっしゃいますか
寒さ厳しき折 どうかご無理なさらないでください
先生の十分なご回復と 穏やかな一年となりますよう 心よりお祈りいたしております
まずはゆっくりとご養生ください
3-3. 取引先などビジネス関係者へ送る場合
ビジネス関係者への挨拶状では、仕事への復帰をせかしているような印象を与えないことがもっとも重要です。職場の状況などを簡潔に伝え、安心して療養に専念してもらえるような配慮を心がけましょう。
<文例>
年始のご挨拶を申し上げます
ご療養中と伺い 心配しております
その後のご経過はいかがでしょうか
〇〇様におかれましては どうかお仕事のことは気になさらず 治療に専念なさってください
後任の〇〇さんを中心に 滞りなく業務を進めておりますのでご安心ください
〇〇様の完全なご回復を 社員一同 心よりお祈り申し上げます
厳しい寒さが続きますので どうぞご自愛ください
3-4. 相手から年賀状を受け取った場合の返信文例
相手が療養中であることを知らずに年賀状をもらった場合は、「寒中見舞い」として返信するのが一般的です。まずは年賀状をいただいたことへのお礼を述べ、その後に相手の体調を気遣う言葉を続けましょう。
<文例>
寒中お見舞い申し上げます
ご丁寧な年始のご挨拶をいただき ありがとうございました
ご静養中とは存じ上げず 失礼いたしました
お加減はいかがでしょうか
今はどうかご無理なさらず 十分に養生なさってください
一日も早いご回復を心よりお祈りいたしております
4. 「年始状」と「寒中見舞い」の使い分け
療養中の方への挨拶状として便利な「年始状」と「寒中見舞い」。どちらも賀詞を使わない点は共通していますが、送る時期に違いがあります。それぞれの特徴を理解し、状況に応じて使い分けましょう。
4-1. 年始状を出す時期と特徴
年始状は、松の内(一般的には1月1日~1月7日、地域によっては1月15日まで)に届くように送る挨拶状です。年賀はがきは使わず、通常のはがきや私製はがきを用います。
「あけましておめでとうございます」などの賀詞は使わずに、「年始のご挨拶を申し上げます」といった言葉から始め、相手の健康を気遣う内容をつづります。
年内に準備を済ませ、新年の早い時期に挨拶を届けたい場合に適しています。
4-2. 寒中見舞いを出す時期と特徴
寒中見舞いは、松の内が明けてから立春(例年2月4日ごろ)までの間に送る季節の挨拶状です。もともとは、一年でもっとも寒さが厳しい時期に、相手の健康を気遣うために送られていたものです。その趣旨から、療養中の方への挨拶状としてふさわしいとされています。
また、年賀状を出しそびれた場合や、喪中の相手への挨拶、相手からいただいた年賀状への返信が遅れた場合など、幅広い用途で使うことができるのも特徴です。
4-3. どちらを選ぶかの一般的な判断基準
どちらを選ぶか迷った場合は、挨拶状を出すタイミングで判断するとよいでしょう。
- 年末までに準備ができ、松の内に届けたい場合 → 「年始状」
- 松の内を過ぎてから送る場合 → 「寒中見舞い」
- 相手から年賀状が届いたことへの返信として送る場合 → 「寒中見舞い」
年始状は、まだあまり一般的ではないため、相手によってはなじみがないかもしれません。その点、寒中見舞いは季節の挨拶状として広く知られているため、どのような相手にも送りやすいといえるでしょう。
相手との関係性や、ご自身が挨拶状を準備するタイミングに合わせて、最適な方法を選んでください。
まとめ
病気や療養中の方への年始の挨拶は、形式以上に、相手の心と体を思いやる気持ちが何よりも大切です。お祝いムードを控えめにし、「賀」の字を使わない、忌み言葉を避けるといった基本的なマナーを守ることで、あなたの温かい心遣いはきっと相手に伝わるはずです。
今回ご紹介した文例を参考に、あなたと大切な方との間に、穏やかで心通う新年のご挨拶が生まれることを願っています。まずはペンを取りあなた自身の言葉で、そっと寄り添う一言を添えてみてはいかがでしょうか。
記事の監修者

.a Career代表
国家資格キャリアコンサルタント/ワークプレイスハラスメントカウンセラー/研修講師。
医療・航空・行政で培った経験を活かし、品格ある接遇やビジネスマナー、書面での礼節(年賀状・挨拶状・ビジネス文書など)に関する研修を実施。組織の信頼と品質向上を支援し、企業研修や講演でも高い評価を得ている。



