コラム

年賀状じまい、本当に後悔しない?決断前に読むべき失敗例と円満な進め方

2025.12.01
年賀状じまい、本当に後悔しない?決断前に読むべき失敗例と円満な進め方

「もう何年も続けてきたけれど、そろそろ年賀状をやめたいな…」
そうお考えになったことはありませんか?年賀状じまいを検討する方が増える一方で、「人間関係が気まずくなったらどうしよう」「相手を不快にさせて後悔しないだろうか」といった不安から、なかなか一歩を踏み出せない方も多いようです。
この記事では、年賀状じまいにおける後悔のよくあるパターンと、それを未然に防ぐための具体的な対策を、誰にでも分かりやすく解説します。失礼にあたらないための文例も豊富に紹介していますのでご安心ください。
この記事を最後まで読めば、あなたが本当に年賀状じまいをすべきか。そして、するならばどう進めればいいか。その答えがきっと見つかります。

1. なぜ?「年賀状じまい」を考える人が増えている背景

近年、メディアなどで「年賀状じまい」という言葉を耳にする機会が増えました。まずは、この言葉が持つ本来の意味と、多くの方が年賀状じまいを考えるようになった社会的な背景について見ていきましょう。
ご自身の状況と照らし合わせることで、考えを整理するきっかけになるはずです。

1-1. 年賀状じまいとは何か

年賀状じまいとは、これまで年賀状のやり取りを続けてきた方々に対し、今後の送付を辞退する旨をお伝えする挨拶のことを指します。
高齢になったことやライフステージの変化などを機に、年賀状の準備が負担になった方が、人間関係を円満に保ちながらやり取りを終えるための、いわば「終わりの挨拶」です。
大切なのは、一方的に送付をやめて相手に心配をかけたり、関係を断ち切るような印象を与えたりするのではなく、感謝の気持ちとともに「これからの新しいお付き合いの形」を提案する姿勢です。
きちんと挨拶をすることで、相手への敬意を示し、これからも良好な関係を続けていきたいという意思を伝えることができます。

1-2. 年賀状をやめる主な理由

年賀状じまいを考える理由は人それぞれですが、主に以下のようなものが挙げられます。年末の忙しい時期に、デザインを選び、コメントを考え、印刷し、一枚一枚に手書きでメッセージを添え、宛名を書いて投函するという一連の作業は、決して小さな負担ではありません。

  • 高齢による負担増
    年齢を重ねることで、視力の低下や体力の問題から、宛名書きのような細かい作業や、大勢の方へメッセージを考えることが心身ともに難しくなったという理由です。
  • ライフスタイルの変化
    定年退職や還暦、子の独立といった人生の節目を迎え、これまでの義理の付き合いを見直し、人間関係を整理したいと考えるようになったという理由です。
  • コミュニケーション手段の多様化
    SNSやメール、LINEといったツールが普及し、年賀状でなくとも気軽に新年の挨拶や近況報告ができるようになりました。よりリアルタイムで手軽な連絡手段があるのに、年に一度の形式的なやり取りに疑問を感じる方も増えています。
  • 価値観の変化と経済的負担
    儀礼的な挨拶よりも、個人とのつながりを重視するようになり、形式的なやり取りを見直したいと感じるようになったという理由です。また、はがき代、印刷代、インク代など、送る枚数が増えれば経済的な負担も無視できません。

これらの理由から、お互いの負担を減らしつつ、より自分らしい形で人とのつながりを大切にしたいと考える方が増えているといえるでしょう。

2. 【失敗談】年賀状じまいを後悔する5つの典型的なパターン

円満な人間関係の整理を目指して行った年賀状じまいが、思わぬ後悔につながってしまうケースも少なくありません。
ここでは、よくある5つの失敗パターンをより具体的にご紹介します。ご自身の決断が同じような後悔を生まないか、事前にチェックしてみましょう。

2-1. パターン1:大切な人との関係が疎遠になってしまった

年賀状が、年に一度の唯一のコミュニケーション手段だったという相手はいないでしょうか。特に、遠方に住む恩師や旧友など、普段なかなか会えない方とのつながりが、年賀状じまいをきっかけに完全に途絶えてしまうことがあります。
「年に一度の生存確認のようなものだった」その大切な糸が切れてしまい、「いつか連絡しよう」と思っているうちに時が過ぎ、関係が自然消滅してしまったと後悔するケースは非常に多いようです。

2-2. パターン2:相手の近況(結婚・出産・喪中など)が分からなくなった

年賀状は、新年の挨拶だけでなく、結婚や出産、転居といった相手の人生における大切な出来事を知る貴重な機会でもあります。また、喪中はがきを通じてご不幸を知ることもあります。
年賀状じまいによってこれらの情報が届かなくなり、知らぬ間に相手の喪中に明るいメッセージを送ってしまったり、お祝いの機会を逃したりと、相手に対して失礼な振る舞いをしてしまったと後悔するパターンです。

2-3. パターン3:年始に届く年賀状を見て寂しさを感じた

「これからは年賀状を送らない」と宣言したものの、いざお正月を迎えると、ご自身には届かなくなった年賀状を家族が楽しそうに読んでいる姿を見て、急に寂しさや孤独感に襲われることがあります。これまで当たり前だった新年の習慣がなくなることで、予想以上の喪失感を感じてしまう方も少なくないのです。
「社会とのつながりが一つ減ってしまった」と感じ、虚しい気持ちで新年を過ごすことになったという声も聞かれます。

2-4. パターン4:伝え方が悪く、相手に不快な思いをさせてしまった

年賀状じまいの挨拶文の書き方には、細心の注意が必要です。例えば「年賀状は今年でやめます」といった一方的で説明不足な表現は、受け取った相手に「自分との関係を終わりたいのだな」という冷たい印象を与えかねません。感謝の言葉や、今後の関係も続けたいという意思が伝わらないと、相手を深く傷つけてしまう可能性があります。
言葉選びを誤ったことで人間関係に溝ができてしまい、修復が難しい気まずい雰囲気になったと後悔するケースも見られます。

2-5. パターン5:再開したくてもできず、気まずい思いをした

一度「年賀状じまい」を宣言してしまうと、特定の相手にだけ年賀状を再開したくなった際に、心理的なハードルが生まれます。「やめると言ったのに、なぜ送ってきたのだろう」と相手を困惑させてしまうかもしれません。
特に、子どもの結婚や孫の誕生など、家族の慶事を写真付きで伝えたいと思ったときに、気軽に年賀状を送れなくなったことを後悔する可能性があります。ご自身の状況だけでなく、家族の将来的なイベントも考慮に入れていなかったことを悔やむパターンです。

3. 後悔しないために。年賀状じまいを決める前の3つの確認事項

ここまでご紹介したような後悔を避けるためには、勢いで決断するのではなく、事前にご自身の人間関係や状況を冷静に見つめ直すことが不可欠です。
ここでは、年賀状じまいを実行する前に、必ず確認しておきたい3つのポイントを解説します。

3-1. 確認事項1:本当に「全員」とやめる必要があるか

年賀状の準備が負担だからといって、必ずしも全員とのやり取りを一律にやめる必要はありません。まずは、これを機にご自身の人間関係を一度「棚卸し」してみてはいかがでしょうか。
今後も年賀状でつながり続けたい大切な方と、別の形での交流を考えたい方、これを機にお付き合いを整理したい方など、相手との関係性に応じてグループ分けしてみましょう。
例えば「親しい友人や親戚とのやり取りは続ける」「会社関係は退職を機にやめる」など、ご自身の中でルールを決めるのも一つの方法です。一部の方とのつながりを残すことで、後悔するリスクを大幅に減らすことができるでしょう。

3-2. 確認事項2:年賀状以外の連絡手段は確保できているか

年賀状じまいをしても関係を続けたい相手とは、必ず年賀状以外の連絡手段を確保しておきましょう。電話番号はもちろん、メールアドレスやSNSのアカウントなどを交換しておくことが大切です。
特に、ご高齢の方など、デジタルツールに不慣れな相手の場合は、住所と電話番号が唯一の連絡手段となることも少なくありません。年賀状じまいの挨拶状に「今後はこちらの電話番号にご連絡いただけますと幸いです」と一言添えて、代替の連絡先を明確に伝えておくとよいでしょう。
いざというときに連絡が取れなくなってしまう事態を防ぐための、重要なステップです。

3-3. 確認事項3:適切なタイミングはいつか

年賀状じまいを伝える際は、相手との関係性を考慮し、適切なタイミングを選ぶことがマナーです。
一般的には、相手が年賀状の準備を始める前の11月から12月上旬までに挨拶状が届くように送るのがもっとも丁寧です。相手に無駄な準備や費用をかけさせないための大切な配慮といえるでしょう。
もしその時期を逃してしまった場合は、年明けの松の内(一般的には1月7日まで、関西など一部地域は15⽇まで)が明けてから、寒中見舞いとして報告とお詫びを伝える方法もあります。誰に、いつ、どのような形で伝えるのがもっとも誠実な印象を与えるか、相手の立場に立って考えてみましょう。

4. 【そのまま使える文例集】円満に終える伝え方と今後の関係維持のコツ

ここでは、実際に年賀状じまいを行う際の挨拶文の文例を、状況別にご紹介します。大切なのは、これまでの感謝の気持ちと、今後も良好な関係を続けたいという想いを誠実に伝えることです。
文例を参考に、ご自身の言葉でアレンジしてみてください。

4-1. 最後の年賀状で伝える場合の文例

今年送る年賀状を最後にしたい場合に、文面に書き添える形で伝える方法です。通常の賀詞や挨拶に加えて、辞退する旨を丁寧に記載します。「誠に勝手ながら」といったクッション言葉を使い、相手への配慮を示しましょう。

<文例1>

謹賀新年
皆様にはお健やかに新年をお迎えのこととお慶び申し上げます
さて 誠に勝手ながら 本年をもちまして年賀状でのご挨拶を控えさせていただくことといたしました
これからはお電話やメールなどでご連絡をさせていただければ幸いです
皆様の今後のご健勝を心よりお祈り申し上げます

<文例2>

あけおめでとうございます
旧年中は大変お世話になりました
誠に恐縮ではございますが 寄る年波には勝てず 筆をとることが難しくなってまいりました
つきましては 本年をもちまして皆様への年賀状を最後とさせていただきたく存じます
今後とも変わらぬお付き合いのほど どうぞよろしくお願い申し上げます

4-2. 寒中見舞いで伝える場合の文例

年賀状をいただいた相手への返信として、寒中見舞いで年賀状じまいを伝える方法です。まずは年賀状をいただいたことへのお礼を述べ、年始の挨拶ができなかったお詫び、そして今後の年賀状を辞退させていただく旨を丁寧に伝えます。

寒中お見舞い申し上げます
ご丁寧な年賀状をいただき ありがとうございました
昨年より 年賀状でのご挨拶を控えさせていただいておりますため
ご連絡が遅れましたこと お詫び申し上げます
誠に勝手ではございますが 今後とも変わらぬお付き合いをいただければ幸いです
寒い日が続きますので どうぞご自愛ください

4-3. 挨拶状(はがき・手紙)で伝える場合の文例

年賀状シーズンとは別の時期に、改めて挨拶状を送る、もっとも丁寧な方法です。11月ごろに送ることで、相手が年賀状を準備する前にこちらの意向を伝えることができます。定年退職などを機に伝える場合は、退職の挨拶状に一言添えるのもよいでしょう。

拝啓
皆様におかれましては益々ご清栄のこととお慶び申し上げます
さて 私儀 このたび終活の一環として 年賀状でのご挨拶を本年限りで失礼させていただくことにいたしました
長年にわたり賜りましたご厚情に 心より感謝申し上げます
今後はSNSなどでお付き合いをさせていただけましたら幸いです
末筆ではございますが 皆様の今後のご健勝を心よりお祈り申し上げます
敬具

4-4. 【関係維持のコツ】年賀状以外の季節の挨拶を活用する

年賀状じまいをした後も、良好な関係を維持するためには、年賀状に代わるコミュニケーションを心がけることが大切です。相手との関係性や、相手のライフスタイルに合わせて、さまざまな方法を試してみましょう。

  • 暑中見舞いや残暑見舞い:
    年賀状と同様に季節の挨拶状として、夏にご自身の近況を伝える良い機会になります。
  • 誕生日カードやクリスマスカード:
    相手の特別な日をお祝いするメッセージは、よりパーソナルで温かい気持ちが伝わります。
  • 季節の便り:
    旅行先から送る絵はがきや、美しい季節の写真を添えた手紙なども、心のこもった素敵なコミュニケーションです。
  • 電話やEメール:
    声で直接話したり、気軽に文章でやり取りしたりすることで、よりタイムリーな交流が可能です。

年賀状という形にこだわらず、自分らしい方法で交流を続けることで、「あなたのことを気にかけています」という気持ちが伝わり、関係がより深まることもあるでしょう。

まとめ

今回は、年賀状じまいで後悔しないための具体的な方法について、失敗例や文例を交えながら解説しました。
年賀状じまいを成功させる鍵は、一方的にやめるのではなく「今後の関係性も大切に思っている」という気持ちを相手に誠実に伝えることです。どの相手にいつ、どのような方法で伝えるのが最適か本記事で紹介した確認事項を参考に、ご自身の状況に合わせてじっくりとご検討ください。
この記事があなたの人間関係をより良いものにするための一助となれば幸いです。丁寧な準備をすれば、きっと円満な形で新たな一歩を踏み出せるはずです。

記事の監修者

武樋 史子〈たけひ・あやこ〉

.a Career代表
国家資格キャリアコンサルタント/ワークプレイスハラスメントカウンセラー/研修講師。
医療・航空・行政で培った経験を活かし、品格ある接遇やビジネスマナー、書面での礼節(年賀状・挨拶状・ビジネス文書など)に関する研修を実施。組織の信頼と品質向上を支援し、企業研修や講演でも高い評価を得ている。